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フクヤマ・ハンティントン・ミアシャイマー

 職場の後輩から、ミアシャイマーについて質問されました。
 国際政治を学ぶにあたっては欠かせない人物なので、彼に教えるついでに、学生にもわかるペーパーを作って学内Wikiに掲載しようと思って調べていたら、2010年11月・12月号のフォーリン・アフェアーズに掲載されたミアシャイマー、フクヤマ、ハンチントンを比較する論文を見つけました。
 翻訳するだけではつまらないので、私なりに書き直してブリーフィングメモにまとめてみました。これで後輩君の意見を聞いてみよう(判る?おもしろい?とか)

 参考文献
 ・「歴史の終わり」フランシス・フクヤマ
 ・「文明の衝突」サミュエル・ハンチントン
 ・「大国政治の悲劇」ジョン・ミアシャイマー
 ・"Conflict or Cooperation? Three Visions Revisited", Richard K. Betts, Foreign Affairs Nov/Dec 2010

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 日本人は米国中心の世界観・価値観に親しんでおり、自由と協調といった価値観が、国際的規範であるかのように見なしがちであるが、現実の世界は多様な世界観・価値観に満ちている。
 我々が世界や東アジアを見る際には、そこに価値判断の基準点が存在するはずであるが、隣人である中国人が同じ基準点を持っているとは限らない。同じ世界を見ていても、目に移る世界は異なる色ガラスを通しているかも知れない。このため、今日の国際社会を動かす原動力とその将来像については、中国がどのような考え方をしているかということに注目する必要がある。

 冷戦後の国際社会を動かす原動力及び将来像については、3人の米国人国際政治学者がそれぞれユニークな主張をしている。

 フランシス・フクヤマは、著書「歴史の終わり」(1992年)の中で、最も楽観的な世界観を展開した。人類の歴史は「認知を求める闘争」の歴史であり、人間の尊厳と平等を求める探求の道であったが、人類社会は民主主義と資本主義という形態で最終的な合意に至っており、いずれはこの二つで均質化されていく。したがって、政治体制や経済システムをめぐって試行錯誤を繰り広げてきた人類の「歴史」は終わりを迎えつつあると主張した。
 彼の主張の中心は、自由民主主義は地域・文化を問わず世界的に受け入れられたというものである。これは、リベラル(国際協調主義)の3つの理論に繋がって行く。すなわち、①豊かで自立した国家同士はあまり戦争をしない。②民主主義国家同士は戦争をしない。③国際機関は国家間の戦争を回避させ、協調させる。

 これに対し、「文明の衝突」(1996年)を書いたサミュエル・ハンチントンは、世界は経済的・テクノロジー的に統合されつつあることを認めつつ、社会的な境界は残ると主張した。世界を統合しようとする力があることは事実であるが、この力の反作用として人々は自らが何者であるかということを意識し、「文明」を境界線として世界は分断されていくと主張したのである。そして、「西側」は当面の間、世界を席巻するが、国際政治においては、「西側」と「それ以外」の裂け目が特に拡大すると共に、西側の地位は相対的に特にアジア地域において低下していくと述べた。
 彼は、近代化と欧米化を同一視することは重大な誤りであり、西側の規範を押し付けることは平和ではなく抵抗を呼び起こすため、世界平和のためには多様な文明・文化という多様性を受け入れる必要があると主張した。すなわち、フクヤマの解決策はハンチントンにとっては問題の始まりなのである。

 ジョン・ミアシャイマーの「大国政治の悲劇」(2001年)が示すのは、最も平和と縁遠い世界である。国際社会では、これまでと同様にパワーを求める過酷な競争が続く。①国際社会はアナーキーであり、②他の国の意図も正確には読み取れないが、③大国は相互に攻撃力を有しており、④自国の生き残りを最重要の目標として、⑤合理的に行動する結果、大国は平和と安全を求めて競争を続けることになる。
 この世界では、平和と安全はバランス・オブ・パワーの上に成り立つものであり、したがって、大国は域内を自らのコントロール下に置くことで、究極的には覇権国となることで自国の安全を確保しようとする(オフェンシブ・リアリズム)

 しかし、3人のうち何れも、9.11を予測しえなかった。ハンチントンはイスラム社会が西側にとっての挑戦者になりうるとは予測したが、大規模テロという形式を予測したわけではない。フクヤマにとって、アラブ社会を除くイスラム社会は民主化へと進みうる国々であった。これは、9.11の直後には大分疑わしい議論と見られたが、2010年に始まる「アラブの春」を見るとフクヤマの予言は当たっているのかも知れない。ミアシャイマーにとって、イスラム社会は大国ではないために、国際政治の主要なアクター足り得ない存在だった。

 この3人に共通することは、先進国の首脳が集まって国際社会の方向性を決定するダボス・スタイルの限界を示したことと、経済以外の動機が国際社会を動かすパワフルな動機足りうることを示したことである。
 ただし、彼らの理論は国際社会を形作る枠組みの概念を提唱するものであり、彼らは預言者ではない。経済的・政治的なランダム性は避けられないし、その意味では概念とは幻影であるとも言える。
 しかし、政策立案者は正しい方向に国家を進めるにあたって、根拠となるものが必要である。3人が提供するのは正にその根拠である。
 フクヤマは、西側の価値観による世界標準化と、これによりもたらされるリベラリズム(国際協調主義)を示した。
 ハンチントンは、「分断された世界」を示し、西側に更なる団結を求めると共に、将来の衝突は西側と他の文明(イスラム、中華等)との境界線で生じうるとの警鐘を鳴らした。
 ミアシャイマーは、リアリズムが依然として世界の一部を動かす原動力であることを示した。

 最後に、中国に対する3者の視点を示す。
 フクヤマ
 ・中国は西側社会に合流し、「歴史の終わり」を受け入れる。

 ハンチントン
 ・中国の独自性を尊重し、影響力抑制から手を引くべき
 ・対立するのであれば、現在の米国の政策よりも更に決定的なものが必要
 ・中華文明は、多極、バランス、平等といった概念と相性が悪い
 ・中華思想と階層化が東アジアでは最も自然

 ミアシャイマー
 ・西側はコアリションを形成し、中国への封じ込めを行う
 ・中国はアジアにおける覇権を追求する
 ・「関与(エンゲージメント)」は解決策とならない
 ・国際社会において、2極世界は最も安定した形態

(了)
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とりあえず、今日はここまで。後でハンチントンの「引き裂かれる世界」も読んで加筆修正しますかね。
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